腐れた花

 2011年3月、絵の題材に、花を買った。
 ふた月後に個展を控えていたが、予定枚数に達しておらず、あと1枚は描いておきたかった。
 震災直後で、スーパーにもあまり物はなかったが、併設の花屋には花があった。
 少しは明るい気持ちになって、花を買ってはみたが、描くでもなく、眺めるでもなく、日が過ぎる。
 心配事があった。
 震災時、パニックを起こした飼い猫が帰らず、毎日屈託して暮らしていた。
 それでも、描かねばならない。
 画廊主からは、震災直後であるし、延期にしてはとの話も出たが、自堕落に屈託した生活のなかで絵を描き、個展を開くことに意味を見出そうとしていた。
 しかし、花など買ってはみたものの、やはり描く気が起こらない。
 やがて花は枯れ始めた。つぼみのまま腐りかけた部位もあった。なんとかしてやりたい心持ちになった。
 腐れた花を、描いた。

 「泣きながら描いた絵があってもいい」 山口薫

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