煮もの


 いい絵を見ると、腹が減る。
 吉岡憲の『煮もの』を見たとき、急にお腹が空いた。
 その湯気の向こうに、画家のささやかな暮らしが見える気がした。
 ぼくは食いしん坊なんだろうか。
 梅原龍三郎の紫禁城を描いたのを見ると中華料理を食べたくなるし、藤田嗣治を見ると、甘いショートケーキが食べたくなる。
 初めてセザンヌを間近に見たとき、とても驚いた。描かれたりんごやオレンジが、あまりにみずみずしかった。画集でしか知らないときには、そんなことを感じたこともなかった。うまそうだった。

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