ある日、小学四年のぼくは、家の前にいた鳩に、何気なく餌を撒いた。
 屋根の上や、電線には、それを見ている鳩がとまっているもので、それらも降りてきてはついばんだ。
 翌朝、また鳩が来たので、餌を撒いてやった。
 また翌朝も、鳩が来る。昨日よりも増えている。
 鳩はどんどん来た。どうやら、すみかである平和公園のほうから、大勢連れ立って飛んでくるようになった。
 毎朝、道が鳩で埋め尽くされるほど、飛んできた。
 そうして今度は帰らなくなった。一日中、電線にとまり、家を囲む恰好になった。いつも百羽ほどいた。ヒッチコックの『鳥』を思わせた。
 困ったことに、鳩は電線から糞を垂れるので、やりきれなくなった。近所迷惑にもなるし、餌を撒くのをやめた。
 それから一週間ほどで、鳩はほぼいなくなったが、三羽くらいは、しばらくは残っていた。
 ぼくが学校から帰っても、餌を撒いてもらえないからか、時折寂しそうに啼いた。

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