セーター

 アランセーターが大好き。
 アイルランドの、アラン島の漁師が着るセーター。
 木が一本も生えない岩だらけの島で、過酷な漁に出ても潮風から身を守ってくれるセーター。
 漁師の妻が編んだセーターには、その家その家の編み模様があって、もし漁師が遭難しても、セーターの模様を見れば身元が判った、と言い伝えられたセーター。

 だけど、そういった言い伝えは、実はほとんどが事実ではなかったという、ちょっとがっかりなセーター。
 それでも、アランセーターを着ると、それだけで海の男になれるような、羊毛からケルトの香りが漂うような、ちょっと誇らしい気分になる。
 ぼくのアランセーターを編んでくれた人の名は、なんて名前だったか。
 編み手のサインが入ったタグを、どこかに残しておいたはず。
 その人は漁師の妻か、娘か。
 ぼくが遭難したら、セーターの模様で、ぼくが誰だか判るかな。  

 

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